タイトル | 地底旅団ROVER元老院第371回CAVING | ||||||||||||
サブタイトル | 第5次檜原村惣角沢の穴第2洞調査 | ||||||||||||
分 類 | 調査ケイビング | ||||||||||||
入洞洞窟 | 惣角沢の穴第1洞、惣角沢の穴第2洞、惣角沢シラナギクボの穴 | ||||||||||||
日 程 | 2019年5月18日(土)〜19日(日) | ||||||||||||
参加者 | 千葉の、村野て、細野、奥沢香那、平間弦(以上、東京農業大学農友会探検部)、田中亮悟(明治大学地底研究部) 以上6名 | ||||||||||||
昭和15年に発行された岳人用指導書『秋川の山々』(東京瓦斯山岳会編 木耳社)には以下の記述がある。 「御前山の頂上には鍾乳洞があると云ふ専らの噂であるが、土地の人はその存在を認めても位置を詳らかにせず、或は頂上の北側と云ひ、或は頂上の南側と云ひ一致しない。恐らく入り口を見た者が殆ど居ないのではないかと思はれる。ただ、逆穴というのがあって、入口は上向きに落ち込んで居て、落ちたら上る術が無いさうである。位置は御前山に直登する惣角沢のつめに屹立する二十米餘の石灰岩の絶壁の下にある。御前近傍は千米以高が石灰岩で構成されて居る為、洞穴があるとすれば鍾乳洞であるから御前山の鍾乳洞とは恐らく、その惣角沢のつめに在る逆穴を云ふものではないかと云ふ帰結が生ずる。」 このエリアでは、2011年の第1次檜原村北秋川惣角沢洞穴探査(地R元第256回CAVING)で小穴「惣角沢の小穴」を確認。洞口の位置が「絶壁の下にある」という記述と一致していることから、当初はこの小穴が「逆穴」ではないかと考えたが、「落ちたら上る術が無い」と記述されているような洞窟ではなく、「惣角沢の穴第2洞」と混同されている可能性が高いと考えられた。 また、同年の第2次檜原村北秋川惣角沢洞穴探査・第3次檜原村惣角沢の穴調査(地R元第270回CAVING)では「惣角沢の穴第2洞」付近の裂罅が「第2洞」へ接続している可能性が高いことを確認。「惣角沢の穴第2洞」の第2洞口とした。 2018年の第4次檜原村惣角沢の穴第2洞調査(地R元第367回CAVING)では、掘削による第3洞口の開口と追加測量、「惣角沢の穴第3洞」の確認を行った。 今回の活動では、未完了となっている「惣角沢の穴第2洞」の第2洞口からの探検と測量 、「惣角沢の穴第3洞」「惣角沢の小穴」の測量 、地上測量を主な目的とした。 18日20:00、千葉・細野が千葉宅を出発。 20:30、JR谷保駅で奥沢嬢が合流。 21:00、JR拝島駅で村野・田中君・平間君をピックアップし、いざ檜原村へ!・・・のはずが、出発した途端、千葉が長靴を忘れたことを今更になって思い出す。 慌てて隣の福生市内に実家のある鳥居(旧姓:木嵜)の携帯に電話するも、そもそも洞窟用長靴を持っておらず断念。やむなく購入できる店を探すことに。 時間はすでに21時過ぎ。この地域では深夜に突入する時間帯である。幸い、22時まで営業しているディスカウントストア「ジェーソン 福生熊川店」にたどり着き、900円のスニーカーを購入。商品名は、“Strong Z”。お手頃価格ながら、なかなか頼もしい名称である。 気を取り直して檜原村に向けて出発する。 22:00、檜原村内「中央区の森駐車場」に到着。ここは数馬集落まで至近距離でありながら、周囲に人家がなく、おまけに水洗トイレが完備されている、まさに野営にうってつけの場所である。 タープを張り、飲みながらのブリーフィングを行う。 つまみは、奥沢嬢差し入れの「シュマンケル・ステューベ」の本格ソーセージ。奥沢嬢の父:奥沢一郎氏はハム・ソーセージの本場ドイツで8年間の修行を積んだ、日本でも数人しかいないといわれるフライシャーマイスターであり、お手製のソーセージは国内でも一級品である。そんな貴重なソーセージを、ただ「うまい、うまい」とバクバク食べてしまう我々は、罰当たりといわれてしまうかもしれないが、とにかく何度でも食べたくなるおいしいソーセージである。 また、試作品のサラミも2品、賞味させていただいた。“サラミ”というと、どうしてもあのピザによく乗っている、丸くて固いサラミをイメージしてしまうが、今回の2品は、まるでパテのように柔らかくてまったりしている。バゲットに塗って食べるとまた格別で、サラミにもいろいろなものがあるものだと、目から鱗の逸品であった。 気が付けばブリーフィングよりも飲みが中心になってしまった。 ともあれ、静かな檜原村の楽しい夜は更けて、24:30に消灯。 19日6:00、起床。各自朝食を取ってから撤収。 7:00、出発。ここから「都民の森駐車場」までは10分ほどの距離である。 駐車場の片隅で装備品チェックなどを行いながら、奥多摩周遊道路のゲートが開くまで待機する。 8:00、ゲート開放とともに出発。15分ほどで月夜見第二駐車場に到着し、ここで着替えと装備品の振り分けを行う。 着替えの最中、千葉の視線は田中君の体の薄さに釘付けとなる。地R元の中では、村野が“軽くて薄っぺらな人間”であることは周知のことだが、田中君もそれに負けず劣らず平べったく、千葉の目にかなり魅力的に映ったようだ。狭い洞口から始まる今回の測量要員として、期待大である。 8:30、御前山方面へ向けて徒歩アプローチ開始。 9:00、小河内峠にて小休止。 9:30、御前山の手前で小休止。何度も通いなれた道であるが、ここまで来るだけでも結構疲れる。 我々は専ら巻き道を通ってきたが、学生メンバーは千葉の命令でお約束の高低差がきつい尾根道ルートを通らされる。それでも元気そのものであって、こちらも何となく楽しい気分になってくる。 10:00、目印となる朽ち果てた祠を再確認した後、「惣角沢の穴第2洞」に到着。 10:30、入洞準備を行って活動開始。今回は、第2洞測量班(別名:平べったい班/村野・奥沢・田中・平間)と地上測量班(千葉・細野)の2班に分かれて活動することとした。 【第2洞測量班】 体制はリギング村野・スケッチ奥沢嬢・コンパス田中君・メジャー平間君。 裂罅状の第2洞口からリギングして入洞し、着々と測量を進めていった。この第2洞口は何度来ても超狭洞でちっとも広がる意思がなく、ストレスを感じるところである。 村野は単独、あちこち探索しながらリギングを進め、最深部まで到達。しかし、あるべき「第2洞」との接続箇所は確認できない。 ただ、一つの支洞の奥で、錆付いたスピットアンカーが複数打たれていることを確認。やはりどこかで接続しているところがあることは間違いなさそうである。 一つ気になる点は、アンカーが打たれている支洞の延びる方向が、「第2洞」の本洞のある方向とは正反対であるということで、なんともしっくりこない気分であった。 支洞の奥の探検は後回しにし、とりあえず測量班に合流することとした。測量班は、第2洞口からの狭洞部を降り切った小ホールまでを測量した。 奥沢嬢がスケッチをしている間に他のメンバーは昼食を取り、洞内全体を3人で探索することとした。 すると、田中君が崩落石の隙間を抜けた通路の先に、方眼紙が落ちていることを発見。これは間違いなく2010年8月の第2次檜原村惣角沢の穴第2洞調査(地R元第247回CAVING)で、「第2洞」の第1洞口から鳥居が出洞する際に落としたものである。 前回の活動でもこの付近と「第2洞」とで音声確認が取れており、やはり「第2洞」との接続箇所が、どこかに絶対にあるという確信が深まることとなった。 そして、例のアンカーが打たれた支洞の奥を探検。狭洞部を抜けると、今までとは明らかに違う割れ目系の新たな空間に出てしまった。測量しなければならないことを思うと暗澹たる気分になりながら、この空間を探索すると、田中君が地表への出口を発見。急いで外に出て確認すると、そこは「惣角沢の穴第1洞」の洞口であった・・・。ということで、「第2洞」との接続を目指していたのが、はからずも「第1洞」と接続させることとなってしまった。 ちょうど洞外から千葉も合流し、接続部を含めた内部全体を確認。 15:00、奥沢嬢がスケッチを完成させ、出洞開始。田中君・平間君は「惣角沢の穴第1洞」から出洞。奥沢嬢は補足スケッチをするため、入洞した裂罅状の第2洞口から出洞するという。村野はリビレイを解除してから「第1洞」から出洞。第2洞口で奥沢嬢が出洞するのを待ち、ロープ回収を試みたが、なんとロープの途中の結び目が岩に引っ掛かりうまく回収できない。結局、奥沢嬢が再度入洞して引っ掛かりを外し、無事に回収することができた。誠に申し訳ない・・・ 。 15:30、全員出洞。 【地上測量班】 まずは第1次檜原村北秋川惣角沢洞穴探査(地R元第256回CAVING)で発見した「惣角沢の小穴」へ向かう。 しかし、8年前の記憶はうろ覚えで、露頭の基部に開口ということしかわからない。ひとつひとつ露頭を確認しながら惣角沢を下る。 11:00、またひとつ露頭を確認。高さは約15mで、基部には洞口があった。見る人が見れば明らかに洞窟だが、未報告のようである。 小動物のグアノを横目に四つん這いで進むと6mほどで終点、その先は2ヶ所ほど隙間があるが、崩落石が詰まっていた。 20分ほどディギングして狭洞部を突破、すると3m×3m、高さ2mほどの小空間が広がっていた。崩落によって拡大したホールのようである。つらら石、フローストーン、洞窟珊瑚、いい音がするカーテンがあり、コウモリグアノにはオビヤスデと甲虫の幼虫(ハネカクシの一種の幼虫とのこと)が群がっていた。 細野はサイズ的に通過できないとのことで、洞奥はひとり測量を行う。総延長16.5m。「惣角沢シラナギクボの穴」と命名する。 13:00、測量完了。ひなたぽっこしながら昼食。 13:30、地上測量を開始。「惣角沢シラナギクボの穴」から「惣角沢の穴第1洞」まで、約500mを測る。平均+30度勾配はややきつい。 14:30、第2洞測量班に合流。 第2洞口は「惣角沢の穴第1洞」につながってしまったとの報告を受け、過去の測量図を見ながら洞内を確認。確かに未探検部分となっていた。 16:00、奥多摩周遊道路に向けて出発。 千葉購入スニーカー“Strong Z”も、ややへたりながらもStrongを自称する意地を見せ、何とか最後まで持ちこたえてくれそうである。 17:30、月夜見第二駐車場に到着。着替えなどを済ませて30分後に出発。やはり夏季は周遊道路の通行可能時間が延長されるので非常にありがたい。 18:30、「檜原温泉センター 数馬の湯」にて入泉。食事処のラストオーダーが19時のため、大急ぎで入泉してから夕食を取る。閉店時間間際のため、めぼしいメニューが軒並み売り切れとなっていたのは少し残念であった。 20:00、出発。順次解散となった。 今回の活動では、「惣角沢の小穴」を再発見できなかった代わりに、新洞「惣角沢シラナギクボの穴」を発見した。この洞窟は石灰岩壁基部にあるものの、惣角沢の源頭部からかなり標高が下っており、『秋川の山々』に記述される「逆穴」とは別洞であろう。 洞口の位置、洞窟の形状などから総合的に判断すると、「逆穴」とはやはり「惣角沢の穴第2洞」のことを指していると考えて間違いなさそうである。 また、裂罅状の第2洞口は第2次檜原村北秋川惣角沢洞穴探査・第3次檜原村惣角沢の穴調査(地R元第270回CAVING)で「惣角沢の穴第2洞」との接続部を確認したことから第2洞口となったのだが、それは勘違いであることが分かった。少なくとも方眼紙が通過できる空間はあるので、次回はその接続部を確認しなければならない。 「惣角沢の穴第1洞」は総延長109.3m、「惣角沢の穴第2洞」は総延長130.7m、今回の測量は17.8m。全て接続したら総延長300m近くの洞窟になるのではないだろうか。次回は、何としても「第2洞」との接続部を発見したいものである。(文責 村野哲雄・千葉伸幸)
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