タイトル 地底旅団ROVER元老院第390回CAVING
サブタイトル 18年前の思い出探し at 秩父市「向い谷第2鍾乳洞」
分 類 ファンケイビング
入洞洞窟 向い谷第1鍾乳洞(大血川横穴、大血川鍾乳洞、向かい谷第1鍾乳洞)、大血川新洞
日 程 2022年10月15日(土)〜16日(日)
参加者 千葉の、細野、奥沢、山口真也(東山ケイビングクラブ)、波多腰耕弥(東京農業大学農友会探検部OB) 以上5名
向い谷第1鍾乳洞 埼玉県秩父市大滝、大血川向の沢(向い谷)源流域には複数の洞窟が報告されている。なかでも「向い谷第2鍾乳洞」は3ピッチ(−32m、−8m、−6m)からなる竪穴である。
地R元としては2004年に一度入洞しているが(地R元第136回CAVING)、その際に使用した大血川林道は令和元年度台風19号被害により通行止となっており、今回は向の沢(向い谷)からアプローチすることにした。


15日16:30、細野・山口はJR東小金井駅に集合。細野車ランドクルーザー80にて出発する。

17:00、千葉・奥沢・波多腰はJR立川駅南口付近に集合。千葉車デリカにて出発する。波多腰はテレビカメラマンをしているため、裏話を聞きながら正丸トンネルを越える。

18:30、ベルク 秩父影森店にて合流。各自で朝食や行動食を購入する。恒例となっているアヒージョの食材、フランスパン、酒も購入。秩父B級グルメ「みそポテト」を探すが今日は売り切れてしまったようだ。

20:00、大血川橋に到着。googleマップには眺望ベンチがあったが、実際には取り壊されていた。ここで一泊することにする。
個人テントやブルーシートを広げていると、車で通りかかった地元の方が降りてきて、ここでは過去に自殺した人がいる場所だとの忠告をいただく。ここでの宿泊を快く思っておらず、脅しをかけられているのか?

20:30、若干気分が下がり気味になったが、気を取り直して夕食にする。今回は鶏肉、キノコ、ブロッコリーのアヒージョであったが、肌寒い身体に温かいアヒージョが沁みてとっても旨い。途中、千葉が何かが足りないと言い始め、鷹の爪を買い忘れていたことが発覚。もういっそのこと細野車に常備しおくかと話す。
そんなところへ、車で通りかかった先ほどとは別の地元の方が降りてきた。ここは眺望ベンチで自殺があった場所。。。どうやら本当のことらしい。今夜の寝床は自殺ポイントに決定。
波多腰による「世界の果てまでイッテQ!」の裏話などで盛り上がり、社会にやられている社会人1年目の旅団員:平間に励ましの電話をしながら夜は更けていく。

24:00、3密回避で車内、個人テント、ブルーシートで各自消灯。
16日6:00、起床。秋空が広がり、今日は活動日和になりそうだ。お湯を沸かして朝食にする。

7:00、ぼちぼち片付け。千葉は周辺のゴミ拾い。

7:30、活動準備を開始。スタティックロープ3本やアンカー類などの団装を奥沢・波多腰でそれぞれタックルバッグに分担する。オジサンたちは個装しか持たない。

8:30、秩父源流水先に駐車して、集合写真の撮影をしてからアプローチを開始する。大血川遊歩道自体は台風の影響で通行止めとなっているが、大血川までの舗装路は通行可能であった。
河原から対岸に渡渉して、向い谷右岸沿いに伸びる作業道を辿ってアプローチしていく。

9:00、作業道(右岸)が段々不明瞭になってきたところで、左岸を開拓していた千葉が見つけた作業道(左岸)の方から登っていくことにする。所々ピンクテープはあったりもするが、ガレ場もあり、全体的に慎重に進むような道であった。

9:45、ようやく目的地の半分まで登ってきた所で、何やら人工物と出くわす。斜面にコンクリート壁とその中央に施錠してある扉。発電所関係の設備のようだ。

10:00、沢沿いを辿ってきた我々だが、目指す洞窟は現在地から標高差100m以上に位置するため、高巻きついでに高度も上げていくことにする。

10:30、進行方向に立派な石灰岩露頭が遠くに見えてきたところで休憩する。
「向い谷第2鍾乳洞」へは、この露頭を更に越えなければいけないと考えると、奥沢はちょっと心が折れそうになる。実は今回の計画は7月(真夏)に千葉と2人で行く予定だったが、もし決行していたら完全にバテたと思う。
作戦会議。このペースだと時間的には辿り着けたとしてもロープを張って昇降する十分な時間が見込めないことから、途中の下流部にある「向い谷第1鍾乳洞」「大血川新洞」に目的地を変更する。
ジェントルマン山口が奥沢の団装タックルを代わりに持ってくださる。なんと優しい。

11:00、来た道を戻って「向い谷第1鍾乳洞」に到着。沢から10mほど登った岩体の露頭に開口しているが、岩体にはクイックドローがかけられており、こんな所にまで登りに来るクライマーもいるみたいだ。
洞口は高さ約1.6m、幅約0.4mと縦長い形に開口しており、記録によると総延長55mある。竪穴目的で長いアプローチも覚悟で来た活動だったが、気持ちをファンケイビングに切り替え早速入洞する。
全体的に縦長い形のまま奥まで続いており、フローストーンなどの二次生成物もやや見られた。個人的にはここ最近は奥多摩倉沢地区の洞窟探査しかしていなかったため、久しぶりにザ・穴っぽい横穴に入ることができて気分が乗ってくる。約30m進んだところの最奥部は狭い空間となっており、引き返すことになったのだが、主洞だけでは総延長55mに到底満たないため、まだ続きがあるはずだと支洞アタックを開始する。
目ぼしい支洞入口を見つける。入口から覗いた感じだと、一人分の幅の狭い通路が下方向に延びている。狭洞担当の奥沢が降りてみると、狭い通路を約3、4m進んだ先で更に約7m落ちる空間が確認できた。スタンスがあまりなさそうなため降りてみるのは諦め、写真を撮るだけで空間の確認を終えた。おそらくこの支洞の延長も合わせて総延長55mとなっているのだろう。

12:00、洞口前で昼食。山口の提案で千葉・細野・奥沢がツムツムみたいに洞口に収まっている写真を波多腰カメラマンに撮影していただいた。来年の年賀状の候補カットとなった。

12:30、やや下流に位置する「大血川新洞」に到着。沢沿いに開口している洞口は、高さ約1m、幅約1.8mでパイオニアケイビングクラブによると総延長約115mである(測量図は未発表)。
先に奥沢・波多腰で入洞する。洞口から天井高が低いので匍匐で進んでいくと、だんだんと水流の音が聞こえてくる。水流部に到達すると立派な石柱があった。水位はあまりないが濡らさないように水流を辿って更に奥へと進み、突き当たった場所で後続の3人が来るまで待機する。
全員が合流。ここの空間が最奥部かなと思っていたが、付近を探索していた千葉が広い空間を見つけたものの、身体がつかえて通過できないという。確かに広そうな空間があるが、そこに登る通路に岩が邪魔して狭そうである。狭洞担当の奥沢がヘルメットを外して岩の下の隙間から通過に成功する。そこには天井高が約7、8mあるホールが広がっていた。幅も約6、7mある広さで思わず、おお〜と感嘆してしまった。まだ先が続いているのか!?と探してみるも、この空間で行き止まりであった。
胸がつかえて一向に狭洞部を抜けられない千葉は、その状態でホールを写真に収める。
洞口まで引き返す途中、石柱を中央にして記念撮影をした。

13:30、「大血川新洞」を出発して、そのまま右岸側を沢沿いに下る。その途中、露頭を確認しに行った細野が、洞窟らしきものを見つけたということで、全員がその露頭に向かう。
その際に千葉が斜面を滑落、大事には至らなかったが、胸を強く打ったようだ。
細野が見つけた洞窟は、洞口に石を積み重ねて約2.5mの壁を作っていたが、明らかに自然ではなく、人が積み上げたようであった。一見すると、石の壁で洞口の一部が塞がれているようにも見えるが、洞口レベルは地面から約2mに位置していたため、洞口の斜面に沿って石を積み上げたもののようだ。一体何に使われていた洞窟なのだろうか?もしかして人が住んでいたのかも?など思いながら、崩れやすい石の壁の傍らを登って玄関(洞口)にお邪魔する。謎な洞窟の中は一つの空間になっていて、もうひとつ小さく開口していた洞口は窓の役割を果たし、約7畳の1Rみたいになっていた。 千葉は養蚕風穴かもしれないなと一言。
後日、千葉が調べたところによると、旧大滝村には「大瀧風穴」なる養蚕貯蔵所が存在したらしい。詳細な場所は書かれておらず、我々が確認した石積みの穴が「大瀧風穴」と断言はできないが可能性はある。

14:30、車両に到着。千葉は咳をしたり、笑ったりするたびに胸に痛みが走るようだった。
当初の活動予定時刻より早めに下山し終えたということで、以前の活動でよく訪れていたというホルモン店で反省会をすることに決定。秩父B級グルメ「秩父ホルモン」が有名になり、今や人気店になってしまったということで、開店時間16時に入店するつもりで急いで片付けを済ます。



15:15、道の駅大滝温泉で入浴。大浴場に加えて露天風呂、サウナもあり。展望も望めそうだが後のホルモンが控えていたため、すぐに出る。今度訪れる際にはゆっくりしたい温泉スポットであった。

16:15、焼肉ホルモン一番館に到着。ほぼ予約客で埋まりつつあるなか、なんとか5名分の席を作ってくれた。無事に秩父ホルモンにありつけそうだ。
早速メニューを見てみると、圧巻のホルモンだらけである。手始めに豚ホルモンのシロ、ハツ、タケノコを頼む。運転する千葉・細野以外はビールも注文するが、ホルモンと相性抜群で進んでしまう。続いてレバー、ナンコツ、まぼろしナンコツ(声帯にある希少部位)、豚味噌漬けをいただくが、豚味噌漬けは絶対白米が欲しくなる旨さであった。これだけ色々な種類のホルモンを満喫して腹を満たしたのに、お会計が1人3000円だったのもリーズナブルだ。秩父に来たらまた立ち寄りたい所であった。

18:30、西武秩父駅前温泉祭の湯に移動。お土産など購入。ここで前日に見つけられなかった秩父B級グルメ「みそポテト」をデザート感覚?でいただく。じゃがいもと味噌がよく合って美味しかった!

19:00、解散。各車両ごとに帰路に着く。


目的の「向い谷第2鍾乳洞」には辿り着けなかったが、「向い谷第1鍾乳洞」「大血川新洞」に入洞でき、また風穴跡と思われる場所も確認できたなど、長いアプローチと引き換えに得られたものはあった活動であった。ここ最近は、奥多摩町での活動が多かったが、久しぶりに別のフィールドの洞窟を楽しめたのも個人的に良かった。今度こそ「向い谷第2鍾乳洞」へ行ってみたい、と言いたいところだが何よりアプローチに結構な時間がかかりそうなので気力次第かもしれない。
また、厳密には無事に活動を終えられたわけではなく、千葉が滑落することがあった。倒木に飛びついて沢まで落ちることはなかったが、その際に胸を打ち肋骨のあたりが痛むようだった。数日痛みが消えないため後日、整形外科に行ったところ助軟骨の損傷で全治2週間と診断される。大事に至らずよかったが怪我をしないように気を付けて、今後も安全に活動していきたい。(文責 奥沢香那)
大血川向の沢(向い谷)左岸 大血川新洞 大血川新洞
長すぎるアプローチ 立派な石柱 地下水流
大血川新洞 大血川向の沢(向い谷)右岸 焼肉ホルモン一番館
狭洞部を抜けた先のホール 大瀧風穴? 秩父ホルモン!

【2022年10月大血川向の沢滑落事故報告】
発生日時 2022年10月16日13:30頃
場 所 埼玉県秩父市大滝・大血川向の沢(向い谷)右岸 大瀧風穴?付近(標高650m)
向の沢(向い谷)より大瀧風穴?へ直登する30度傾斜。明確なルートや足場はなく、土壌から苔むした転石が多数露出している。
事故当事者 千葉伸幸(51歳、身長163p、山狩り経験多数)
事故発生経緯 向い谷第1鍾乳洞や大血川新洞からの帰路、細野が向の沢(向い谷)右岸に洞窟(大瀧風穴?)を確認。千葉も河床から洞窟に向かって直登したところ、足をかけた岩場1m四方が崩落、千葉は横体制で半回転しながら1mほど宙を舞い、とっさに倒木に抱き付いてそれ以上の滑落は免れた。抱き付いた際に右胸を強打した。
救助状況 自力で移動。
当事者心理 事故現場の岩場はさほど不安定なようには見えず、傾斜も30度程度、河床との比高も5m程度のため若干気が緩んでいた。滑落時は瞬時に倒木に抱き付いて止まろうという判断ができていた。
負傷状況

右肋軟骨損傷。全治2週間。
問題点 1.活動計画での問題点
特になし。

2.活動中の問題点
全行程が足場不安定・不明瞭のなかでの事故で、活動開始から5時間で疲労が蓄積、判断が甘かったことは否めない。特に帰路はよりこまめな休憩、注意喚起が必要であった。

3.救助の問題点
救助活動なし。
考 察

これまでの経験から冷静に判断でき、大事には至らなかったが、一歩間違えれば骨折程度は免れない滑落であった。常に無理をせず、焦らず、確認を怠らず、個々の体力や技術に応じて活動することを啓蒙していくべきであろう。

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