タイトル 地底旅団ROVER元老院第381回CAVING
サブタイトル 第1次日原地区洞窟所在地確認調査 at 奥多摩町
分 類 調査ケイビング
入洞洞穴 [仮]倉沢鍾乳洞下の穴、倉沢の水穴(倉沢鍾乳洞の一部)、[仮]倉沢の水穴上の小穴、倉沢のたつ穴、倉沢狭小洞、倉沢のもぐら穴、倉沢無名洞(倉沢のねずみ穴)、倉沢三山穴(林道の穴)、倉沢対岸窟
日 程 2020年11月14日(土)〜15日(日)
参加者

千葉の、村野て、細野、奥沢香那、大倉優芽(以上、東京農業大学農友会探検部)、落合直之(東京スぺレオクラブ) 以上6名

倉沢林道・魚留橋 東京都西多摩郡奥多摩町日原地区には、観光洞「日原鍾乳洞」や「日原三又洞」「ちょうちん穴」など大小77洞の洞窟が報告されている。そのうち、倉沢地区では旧観光洞「倉沢鍾乳洞」を含む32洞が報告されているが、地R元的にはほとんど所在地を把握していない。
本活動は、「倉沢鍾乳洞」周辺の倉沢谷右岸・左岸を中心に各洞窟を確認し、今後の調査の基礎資料を作成することを目的として計画された。


14日19:30、村野・細野・奥沢嬢・大倉嬢がJR拝島駅に集合。新型コロナウイルス感染症対策の“三密”を避けるため、車両2台体制で2人ずつ分乗して出発する。

20:30、セブンイレブン 奥多摩古里店にて千葉が合流。一路、今夜のビバークポイントである「倉沢鍾乳洞」付近を目指す。

21:00、倉沢林道入口に到着・・・が!入口にはなんとロープとバリケードが設置され、通行禁止となっているではないか。昨年の台風19号(令和元年東日本台風)の影響なのか、路面が崩壊しているためらしい。ぱっと見たところ、徒歩でなら林道に入ることは可能のようだが、ここから「倉沢鍾乳洞」までは、直線距離でも2キロはある。この暗闇の中を、幕営装備を背負って2キロ以上も歩く気には到底なれない。仕方なく林道を少し入ったところでビバークすることにした。
3月以来の久し振りの活動、地R元主催としては今年初となる活動に、夜食をつまみながら懇親会を行う。奥沢嬢持参の美味しいソーセージとサラミに加え、千葉が大量の豚肉入りキムチ鍋と大量の赤ワインを準備。そして、村野も赤ワインを持参。肉祭り、赤ワイン祭りである。しんしんと冷え込む倉沢の空気の中、それぞれが親睦を深めながら温かいキムチ鍋とワインをたらふく胃袋に収める。

24:00、消灯 。
15日6:30、賑やかな鹿の鳴き声で起床。昨夜の肉とワインがまだ胃に残っていて、若干もたれ気味である・・・。

8:00、撤収して出発する。倉沢林道は、ところどころに大きな落石や倒木があり、確かに車両では通行不能であるが、徒歩でなら問題なく通行できた。天候が良かったのも幸いして、徒歩アプローチも何となく楽しく感じられた。

8:30、「倉沢鍾乳洞」トイレ跡に到着。ここから洞窟探しを開始する。
「倉沢鍾乳洞」へのアプローチ道をたどっていくと途中でフェンスが設置され、立入禁止となるが、その手前の石灰岩露頭基部に、残存洞と思しき洞窟を確認。洞口は人工的に拡張されたような痕跡があり、すぐに狭くなり入洞不能となるものの、一応、洞窟は洞窟である。「[仮]倉沢鍾乳洞下の穴」とした。
そのまま倉沢谷左岸を遡っていくと、「倉沢の水穴」に出る。いつもながら、水穴からは大量の水が湧出している。この付近は岩体にいくつもの割れ目が入り、スポンジのようにたくさんの小穴が開いている。そのうちの1つが、パイオニアケイビングクラブ提供の写真と照合し、「倉沢のたつ穴」と同定できた。洞口は河床より+10mほどの地点にあり、アプローチには落ち葉に覆われた滑りやすい急傾斜の岩場を登らなくてはならない。千葉がアタックをかけ、何とか洞口にたどり着く。記載では「倉沢のたつ穴」は高低差5mの竪穴とのことであったが、実際見たところでは急な上り斜洞といった印象のようである。
また、「倉沢のたつ穴」と「倉沢の水穴」の中間付近で、奥沢嬢が奥行き4mほどの、四つん這いになって入れる横穴を確認。プロット図からすると「倉沢小穴」かと思われたが、「奥行き80m」との記載に合わず、どうも別洞のようである。「[仮]倉沢の水穴上の小穴」とした。
この付近には、他にも「倉沢奥野穴」「倉沢のこうもり穴」「こうもり穴第2洞」などがあるはずで、小さな洞口を片っ端から攻めてみるが、いずれも入洞できるようなサイズのものはなかった。残すエリアは「倉沢のたつ穴」のさらに上方となり、実際、河床からも洞口のように見えるものがあるにはあるのだが、フリーでアタックするにはあまりにも危険である。次回の課題とした。
そこから倉沢谷を少し遡ると、左岸の河床近くに洞口があり、奥沢嬢と大倉嬢で内部を確認。プロット図と平面図から、「倉沢狭小洞」と同定できた。
ちょうどこの頃、林道からこちらに向かって何か声をかけてくる人物がいる。よく見ると、偶然通りかかった落合さんである。こちらに向かってくるので、皆で石を投げつけて地R元的熱烈歓迎をした。
落合さん合流後、倉沢谷をさらに遡行。露頭基部に沿って、八丁沢に入り込む。ここで、奥沢嬢が洞口を確認。洞内記載および平面図から、「倉沢のもぐら穴」と同定した。
また、その先さらに上流で細野が洞口を確認。プロット図および平面図から、「倉沢無名洞」と同定した。また洞口写真から、「倉沢無名洞」と「倉沢のねずみ穴」が同一洞窟であることを確認した。
その間、村野は一旦、倉沢林道に上がり、長尾谷方面と、「倉沢無名洞」の上部の露頭を探索。あまり奥には行かなかったが、このまま先ほどの「倉沢のたつ穴」上方のエリアには行けそうであった。

11:30、魚留橋で昼食。

12:30、活動再開。倉沢林道を下り、「林道の穴」を探索することに。途中、林道には台風で大きくえぐられた箇所があるものの、それなりの通行者がいるのか、しっかりとした踏み跡があり難なく通過。「林道の穴」は、そのえぐられた箇所のすぐ先にあり、洞口は小さいながらも、その名が示す通り林道に面しているため、すぐに発見できた。洞口は路面から+1.5m地点で、周囲の地形からしておそらく林道を開削した際に開口したのだろう。小さい上に中途半端な高さに開口しているため、入洞にはやや苦労するようである。「林道の穴」は、平面図との照合から「倉沢三山穴」と同一洞窟であることが確認できた。
次に「倉沢対岸窟」を目指す。まずは千葉を先頭に「幕岩」と呼ばれる石灰岩露頭を、倉沢谷下流側からアプローチするが、洞口は+3mほどの垂直な岩壁の上にあり、一旦撤退。倉沢谷の上流側から再度アプローチをかけてたどり着くことができた(それでも、結構な急登ではあったが)。
この「幕岩」には、ほかに「小白竜窟第1〜3洞」「カエル穴」「倉沢のタヌキ穴」「倉沢の鹿穴」などがあり、それらを探索するため、さらに上方に向かって手分けをして山狩りを進めていく。高度を上げていくにしたがって徐々に眺望が開け、眼下対岸には「倉沢鍾乳洞」の洞口と、それを擁する大きな石灰岩露頭が見渡せるようになった。なかなかの良い展望を堪能するとともに、改めて「倉沢鍾乳洞」の洞口の大きさを実感することができた。
洞口のありそうな怪しいところはくまなく探索しつつも一向に洞口らしきものは現れず、かなりの標高まで来てしまった。撤収時間も迫ってきたため、千葉・村野は幕岩の倉沢谷下流側から、他のメンバーは上流側から下山することにした。下山しながらも探索を続けたが、結局、何の収穫もないまま林道まで下りてしまった。林道では、途中から行方不明となっていた細野と合流。

15:30、下山開始。
途中、宮下橋手前で、先頭を行く細野が立ち止まってこちらを手招きしている。近寄ると、橋の向こうに何やら真っ黒な生き物がこちらを見て立ち尽くしている。カモシカの仔である。お互い見つめ合ったまま膠着状態となってしまったため、一旦こちらが下がると、相手も林道沿いに向こうに歩き始めた。しかし、歩くのがあまりにもゆっくりなため、結局こちらが追い付いてしまい、「ごめんね」と言いつつ脇をスルー。カモシカの仔は葉っぱをくわえながら見送ってくれた。何とものんびりしたカモシカである。

16:00、細野・村野が車両に到着。他のメンバーも後からやってきたが、例のカモシカの仔に威嚇されて通過できずにいたという。話を聞くと、千葉が石を投げたり体を大きく見せたりして驚かせていたらしい。それはカモシカの仔も身の危険を感じるはずである。

16:30、出発。まだ若干の時間的余裕があるため、「登竜橋の穴」の洞口確認を行うこととした。「登竜橋の穴」は、日原トンネルを出たすぐ先にある登竜橋の近くに開口する、奥行き7.5mの小規模な横穴で、現地に行くと確かに石灰岩露頭となっている。しかし、千葉が付近を探索するものの、それらしい洞口は発見できず、陽も沈んでしまったためタイムアップ。

17:00、現地を出発した。
通常の活動であれば、この後どこかで入泉、皆で夕食を取ってから解散となるところだが、コロナ禍の中ではそのようなこともやりにくく、物足りない思いを抱えながらも、流れ解散となった。


本年4月7日に新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が発令されてから、地R元の活動も自粛が続き、当初7月19日に実施予定だった本活動も延期され、とうとう11月になってしまった。地R元主催の活動としては、今年最初で最後になってしまいそうである。こんな時代が来るとは、考えてもいなかったことである。
また今回、地R元的活動としては初めて導入した無料登山GPSアプリ「ジオグラフィカ」は、大変有用なツールであった。倉沢地域には、今回確認できなかった洞窟がまだまだたくさんあるため、来年も引き続き探査を行っていきたい。それにしても、コロナは1日も早く収束してもらいたいものである。(文責 村野哲雄)
倉沢谷 倉沢狭小洞 倉沢のもぐら穴
「倉沢のたつ穴」のある露岩 「倉沢狭小洞」 「倉沢のもぐら穴」
倉沢三山穴(林道の穴) 倉沢対岸窟 倉沢林道・宮下橋付近
「倉沢三山穴」と「林道の穴」は同一 「倉沢対岸窟」 相性の悪いカモシカの仔

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