タイトル 地底旅団ROVER元老院第347回CAVING
サブタイトル 第55次内間木洞調査 at 久慈市・内間木洞
分 類 合同・調査ケイビング
入洞洞窟 内間木洞(風穴、上の岩穴、上の岩屋)
日 程 2017年2月10日(金)〜13日(月)
参加者 家崎、有馬、菊地敏雄(東山ケイビングクラブ)、後藤聡、森住貢一、野池耕平、福間美希、田島大貴(以上、東京スぺレオクラブ)、平宗雄(あぶくま・けいばぁず・くらぶ)、小向益男(日本洞穴学研究所)、伊藤徳光(日本空糸)、倉片宏樹、新井健汰、佐藤朋哉、秋山菜緒、近岡辰典、西條達哉(以上、明治大学地底研究部)、吹上優芽、塚本玲奈、玉本めぐみ(以上、東京農業大学農友会探検部)、稲浦翼、山田陽介(以上、東洋大学探検部)、亀井宙、濱田直希(以上、近畿大学文化会探検部OB)、渡辺翔子、上仲利奈(以上、近畿大学文化会探検部)、岩田和磨(東京農工大学探検部) 以上27名
地R元としては2000〜2006年の測量調査に参加し、一時は総延長国内第3位にまでなった岩手県久慈市の管理洞「内間木洞」は、2006年2月の活動をもって調査活動終了となった。
2015年2月には、9年振りとなる第53次調査内間木洞調査(第306回CAVING)が行われ、人工登攀による「千畳敷」「稲妻洞」の各上層の探検を行った。
今回の第55次調査は、2016年8月30日に発生した台風10号豪雨災害の被害確認を目的として計画された。活動期間は2月11日(土)〜13日(月)である。


10日16:15、有馬はJR海老名駅にて新井・秋山と合流。新井車に乗り合わせて出発。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)から東北自動車道へと入り、「羽生PA」「阿武隈PA」と適宜休憩や仮眠をとりながら北上する。
さらに八戸自動車道へ進み、「九戸IC」で高速道路を降りて久慈市に向かって南下していく。

21:00、岩手県岩泉町の家崎宅では急遽、菊地が宿泊することになる、簡単にコンビニのお菓子をつまんで夕食とし、早々に就寝。

11日7:00、家崎・菊地はうっかり寝坊してしまい、あわただしく家崎宅を出発。菊地車にて県道7号を北上する。

8:15、菊地・家崎は活動拠点である「内間木ビジターセンター」に到着。早朝に到着していた参加者もおり、鍵の管理者から鍵を開けていただいていた。

9:45、新井車(有馬・新井・秋山)が到「内間木ビジターセンター」に到着。他の参加者も続々と到着する。

10:00、26名という大所帯で全員立ちながらミーティング。初対面も多いため自己紹介や班分けをする。

10:30、各自昼食。台風10号被害調査のために4班に分かれて入洞準備。


【買い出し&南洞班(家崎・福間)】
10:50、まずは菊地に「新川洞」「南洞」の入口の場所を教えてもらう。

11:10、福間車にて宿舎を出発。長内渓流を北上しながら久慈市内に向かい、ホームセンター「SYUNDAY 久慈長内店」にて買い出し。

13:30、宿舎に到着。昼食をとり、食材の整理を行う。

14:45、入洞開始。まずは「新川洞」に向かう。洞床に地下水が流れている跡があり、台風の影響を感じられた。「熊のねどこ」の奥に伸びる支洞を探検。

15:00、「南洞」に入洞。「南洞」入口から「砂場」にかけて、洞床には水流が入口に向かって流れた跡が残されていた。洞床が砂に覆われた「砂場」を越えて奥へと向かう。

15:30、稲妻洞班と出会う。どうやら「稲妻洞」へと抜けてしまったようだ。引き返す。

15:40、「千畳敷」まで戻ると、菊地と風寒洞班(森住・山田・田島)と出会い、共に「南洞」を再アタックする。先程は「砂場」から崩落帯の中で支洞に入ってしまい、「稲妻洞」に通り抜けてしまったようだ。幅約1mの割れ目の「クレパス」をチムニーで進んでいく。「南の部屋」付近で風寒洞班は帰路へつく。家崎・福間は緩やかな下り傾斜を下りながら奥へと向かう。

16:15、「風の産道」手前の通路が2つに分かれ、合流する地点まで行く。「風の産道」に入り込むと匍匐前進で進むような狭洞部が続くのでここで帰路へつく。

16:30、「千畳敷」にて氷筍の写真撮影をし、出洞。今冬の氷筍は通年より高さが低めで、数も少ないように感じる。
内間木洞・新川洞 内間木洞・新川洞 内間木洞・南洞
支洞「新川洞」の入口 洞床に流入した泥 支洞「南洞」のクレパスをチムニーで進む


【北洞班(後藤・倉片・西條・秋山・近岡・小向・亀井・濱田・渡辺・上仲・稲浦・吹上・有馬)】
11:35、入洞開始。有馬は昨年も「北洞」へ来たことを思い出し、わくわくが止まらない。「千畳敷」の地面からすっくと生えたような氷筍と、亀の甲羅のように見える氷の壁は昨年と変わっておらずほっとした。

11:45、観光洞部分を通り、「北洞」の入口である狭洞部「神秘の門」に到達する。通り抜けられるか一瞬不安になるがそんな不安は必要なく、約10分で全員が簡単に抜けることができた。

12:10、昨年見つけることができずに大変悔しい思いをした「花笠」を見つける。「花笠」は石柱であるが、真っ白で、形は確かに笠のように三角だった。これほどにも特徴あるものを前回なぜ見つけられなかったのだろうと疑問に思いながらも、「花笠」を見ることができて非常に満足した。

13:10、「断層の間」に降りる地点に到着し、チムニーで進む。「断層の間」に到着すると、そこは天井が高いが垂直な壁に挟まれ何とも圧迫感のある空間だ。ここで記念写真を撮影する。記念撮影を終えた後は、引き返す。

13:35、1.5mほどの段差を上る際に亀井が足を滑らせ転落。左足首をひねってしまう。しかしその時は自力で歩けそうであった。

14:00、「うらぎりの間」に上がる場所に到着。これから「空中庭園」を目指す。みんなが上がれるよう、後藤がワイヤーラダーを約5分ですばやく設置する。

14:30、全員がワイヤーラダーを上りきる。有馬にとってはこれが初めてのワイヤーラダーだった。

14:35、「うらぎりの間」に到着。コキクガシラコウモリのコロニーが現れる。300頭はいそうだ。50頭ほどが集まってできているコロニーもあった。脇にある小さな支洞を進んでいくと、そこにはお寺の鐘のように深い音色を奏でるカーテンがあった。

15:10、「人選の門」に到達。想像していたよりも「人選の門」は広い。有馬にとっては「神秘の門」の方が狭いように思えた。後藤・倉片・西條・濱田・渡辺・上仲・稲浦・有馬が「人選の門」の通り抜けに成功し、「久光支洞」に入る。小向・秋山・近岡・吹上は先ほど足をひねった亀井を支えながら撤退する。

15:15、「空中庭園」への手前ホールに到着。ここから「空中庭園」に行くには高さ8mほどの急傾斜な坂を登っていく必要がある。フリーで登るのは難しいため、後藤がロープを設置し、渡辺・上仲・稲浦がロープを使って上った。その間、倉片・西條・濱田・有馬は「久光支洞」の最奥へ探索に向かった。
内間木洞・北洞 久光支洞
「久光支洞」の美しい鍾乳石
(後藤聡氏撮影)



15:25、「久光支洞」最奥部を探索した4人が「空中庭園」への手前ホールに戻る。設置されたロープを順次「空中庭園」に向かって登った。

15:55、後藤・倉片・西條・濱田・渡辺・稲浦・有馬が坂の上へ登りきる。念願の「空中庭園」に向かう。胸の高鳴りが激しくなる。上仲は登攀せずにホールで待機する。

16:00、ずっと待ち望んでいた「空中庭園」に到着。そこは縦5m以上あるような白くて巨大なフローストーンや、幅30cmほどの立派なベーコン、20cmの長さのあるストローなど、二次生成物が美しい空間であった。後藤が写真撮影を開始する。

16:30、倉片・濱田が先に「空中庭園」からホールへ戻り、待機している上仲と合流する。

16:50、写真撮影が終了し、撤収を始める。「空中庭園」は大変居心地の良い場所であったため、帰るのが名残惜しい。来年もここに来ることができることを願った。

17:15、急傾斜な坂を肩がらみで下降する。初めての肩がらみ懸垂に苦戦する。まもなく倉片・濱田・上仲と合流し撤退を開始する。

17:20、「人選の門」を通過し、洞口を目指して歩く。途中、ワイヤーラダーを回収する。また、午前中に見た「花笠」をもう一度見る。

17:55、昨年と今年の思い出を振り返りながら歩いていると、いつの間にか「神秘の門」をくぐりぬけ、観光洞部分の「大広間」に出ていた。

18:00、誰もいない静かな観光部を通り、透明な美しい氷筍をめでつつ出洞する。
内間木洞・北洞 断層の間 内間木洞・北洞 人選の門 内間木洞・千畳敷
「断層の間」で記念撮影(小向益男氏撮影) 「人選の門」を通過(小向益男氏撮影) 「千畳敷」の氷筍


15:25、「人選の門」を通り抜けられない人、疲れた人は引き返す。ワイヤーラダー設置ポイントへのルート探しをする際、行きに帰りのルート確認を怠った為、迷ってしまうものの、無事にルートを発見する。「千畳敷」でテングコウモリ、モモジロコウモリを探しつつ、帰路へつく。

17:00、出洞。足をひねった亀井は濱田・渡辺・上仲と共に「岩手県立久慈市立病院」へと向かう。


【稲妻洞班(菊地・野池・新井・伊藤・佐藤・塚本・玉本・岩田)】
11:30、入洞開始。 「煙突穴」付近の洞床では新たな砂が流れ込んでいた。
「煙突穴」入口では、通常は通り抜けできない主洞の水量が少なく通過可能だったので、「煙突穴」を避けてこのショートカットルートを使って「魔のチムニーNo.2」の真下に通り抜けた。
「ぼんぼり流し」でムーンミルクを観察しサンプルを採取する。菊地によると他の洞窟とは違う状態のようである。
「銀河の滝」を鑑賞し、「黄金の滝」を経由して帰路へつく。

15:40、「千畳敷」で解散し、写真撮影を行うもの以外は出洞する。


【風寒洞班(森住・田島・山田・菊地)】
11:45、入洞開始。入洞経験のある菊地・森住を先頭に、「死の谷」降り口に1つ目、「死の谷」対岸に2つ目、「崩落帯」出口に3つ目のワイヤーラダーを設置する。
その先の「水没通路」では台風被害の痕跡が見られた。さらに進み、鍾乳石が発達する「竜宮の舘」では白色チョーク状の鉱物を発見し、下層方向へ続く新通路を発見した。

16:00、出洞。


18:00、全班出洞。順番に「新山根温泉 べっぴんの湯」にて入泉。
その後は夕食の支度を行う。平が自家用車で合流。

20:00、夕食(マーボー丼・わかめスープ・卵野菜炒め)。各班の活動報告をする。

24:00、近大車が宿舎に到着。亀井は捻挫とのことで頑丈に固定してもらい、しばらく様子を見るように言われたとのこと。順次就寝。

12日6:30、起床。周辺は「内間木洞氷筍まつり」の準備であわただしくなっている。

7:00、手早く朝食(おにぎり・漬物・味噌汁)を済ませ、荷物を邪魔にならないように片付けつつ、入洞準備を行う。

【稲妻洞班(小向・倉片・濱田・上仲・吹上・秋山・近岡・西條)】
8:45、入洞開始。行きに迷ってしまい、「稲妻ジャンクション」から「黄金の滝」へと向かってしまう。正しい通路へ戻り、昨日同様に「煙突穴」には登らずに下層のショートカットコースをとる。
「銀河の滝」で写真撮影を行い帰路へつく。

11:15、出洞。


【風寒洞班(家崎・有馬・菊地・平・佐藤・塚本・玉本・渡辺・岩田・新井)】
8:45、入洞開始。「千畳敷」でモモジロコウモリ4頭を確認。有馬はその可愛さに興奮する。
「お化けトンネル」に入るとすぐにある左側の通路に入り、分岐を右側に入って四つん這いで上って行くと、狭洞部「押しの一手」に出る。

9:40、全員が「押しの一手」を通過。体が挟まり苦戦しつつも、トップで抜けた家崎のアドバイスにより、長い時間詰まることなく通り抜けることができた。

10:00、「死の谷」に到着。5mほど落ち込んでいる難所で、ここから先はフリーでは登降することができないため、前日装備班が設置してくれたワイヤーラダーを使用する。深さ5mほどの谷底に向かってワイヤーラダーを使って順番に降りる。この班には初めてワイヤーラダーを使うメンバーが多かったため、菊地・平・家崎がサポートする。菊地に確保をとってもらいながらワイヤーラダーを降りて行くメンバーもいた。

11:00、全員が「死の谷」の底へ到着。天井高は10mほどあって高いのに、壁と壁との距離は1mしかない。だんだんと恐ろしく感じてくる。天井からはキクガシラコウモリがぶら下がっている。
次は「死の谷」対岸にある2本目のワイヤーラダーを登る。

11:40、先ほどよりもワイヤーラダーを使うのに慣れ、全員が「死の谷」の対岸へ登りきる。
間もなくすると氷筍観察会ガイドサポート班だった野池・稲浦が後ろから来て合流し、2人は「竜宮の館」内部の写真撮影のために奥に向かった。

12:00、出洞時間を考慮し、先へ進むのは難しいという菊地の判断により撤退を始める。
菊地・平・新井は「崩落帯」出口に設置した3ヶ所目のワイヤーラダー回収をする。「死の谷」に設置した2ヶ所のワイヤーラダーは野池・稲浦が回収する事になった。
残されたメンバーは順番にワイヤーラダーを降りて行き、「死の谷」底を通って対岸のワイヤーラダーを再び登った。

13:00、全員が「死の谷」の上部へ登りきる。

13:10、「押しの一手」に到着。行きには大変苦労したが帰りは気持ちよいぐらいにすんなりと通れた。

13:20、「熊のねべや」に到着。名前通り、クマ1頭が横たわれる様な広さと窪みのあるところだ。
内間木洞・風寒洞 押しの一手 内間木洞・風寒洞 死の谷 内間木洞・風寒洞 死の谷
狭洞部「押しの一手」を抜けて 「死の谷」(平宗雄氏撮影) 「死の谷」谷底から洞口側を見上げる


【氷筍観察会ガイドサポート班(森住・後藤・野池・福間・伊藤・稲浦・山田・田島)】
9:00、稲浦・山田・田島は洞口に雪の階段作りを行った。

9:30、打ち合せ。

10:00〜11:00、森住・野池・稲浦が観察会のガイドサポートを行う。
野池・稲浦はサポート後に「竜宮の舘」の写真撮影を行い、「死の谷」のワイヤーラダーを回収して出洞。

11:00〜12:00、山田・田島が観察会のガイドサポートを行う。

12:00〜13:00、森住・後藤・福間・伊藤が観察会のガイドサポートを行う。
後藤・福間・伊藤はガイドサポートの前に「禁断の杜」の写真撮影を行った。森住・山田・田島はガイドサポート後に「稲妻洞」の写真撮影を行った。


15:00、全班出洞。出洞した班から「新山根温泉 べっぴんの湯」にて入泉。

16:30、乗り合わせで「内間木ビジターセンター」を出発。

17:00、「小国地区多目的集会施設」に到着。小国地区自治会の「内間木洞氷筍まつり」の打ち上げに参加させていただく。特産の松茸の炊き込みごはんなど、土地ならではのご馳走が並ぶ。地元の方とお話しさせていただく貴重な機会となった。途中からはカラオケ大会となり、東京農業大学の名物・大根踊りも披露した。

23:00、解散。一部は残ってカラオケ大会。

25:00(2:00)、全員宿舎に到着。順次就寝。
内間木ビジターセンター 小国地区多目的集会施設 小国地区多目的集会施設
屋台が立ち並ぶ(小向益男氏撮影) 氷筍まつりの打ち上げ(平宗雄氏撮影) 農大恒例の大根踊り(平宗雄氏撮影)

13日7:00、起床。

8:00、朝食(白菜と鶏肉のスープ・ご飯・宴会の残り物)。その後宿舎を清掃。

10:00、現地解散。有馬はそのまま明治大学地形研究部主催「第6次岩手県久慈市山根町洞窟群調査」に参加する。

12:00、家崎、岩泉町の自宅に到着。


台風10号の豪雨による洞内への影響が「稲妻洞」、「風寒洞」、「南洞」、「新川洞」で見られたとの報告があったが、通路を埋めるほどの大規模なものではなかったために安心した。
昨年は稲妻洞メインだったが、今回は「北洞」上層、風寒洞「死の谷」、「南洞」と多彩な班編を行えたことは良かった。また、ケイビング経験2年以下や全くの初心者が10人以上の集団の中で、大きな怪我が出なかったことは不幸中の幸いだった。けれど捻挫はでてしまい、更に安全な運営を目指さなければいけないと感じた。(文責 家崎晶・有馬千夏)

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