タイトル 地底旅団ROVER元老院第340回CAVING
サブタイトル 台風10号による龍泉洞の大増水被害に関する緊急調査 at 岩泉町・龍泉洞
分 類 合同・調査ケイビング
入洞洞窟 龍泉洞(湧口、湧窟、龍泉窟)、内間木洞(風穴、上の岩穴、上の岩屋)
日 程 2016年10月7日(金)〜10日(日)
参加者 千葉、細野、家崎、小池、菊地敏雄、小向益男(以上、日本洞穴学研究所)、松本力、山口真也(以上、東山ケイビングクラブ)、鈴木雅子(洞窟救助隊)、日本洞穴学研究所研究員及び龍泉洞カルスト・プレイン・プロジェクトが複数名
龍泉洞2016(平成28)年8月30日18時頃、台風10号が暴風域を伴ったまま岩手県大船渡市付近に上陸した。岩泉町には1時間降水量70.5mmという猛烈な雨が降り注ぎ、小本川などが氾濫したことにより死亡20名・行方不明1名(2017年2月21日現在)という惨事に見舞われた。
町のシンボルでもある国指定天然記念物「龍泉洞」では、台風9号や低気圧による降水で増水していたところに、台風10号による大雨が加わって地底湖が大増水、洞口からは濁った水があふれ出した。流出ピークは8月31日午前で、詳しい記録が残っている平成年間では第3地底湖の水位が今までの記録を3m以上も上回る過去に例を見ないほどの大増水である。地底湖周辺の配電盤はほぼ水没、洞口付近の足元灯や床板は水圧で破損、隣接する駐車場の一部は流失したことにより、営業再開の目処は立っていない。
日本洞穴学研究所では、大増水の実態と被害を記録し、今後の「龍泉洞」の保全・保護に寄与することを目的として、緊急調査を行うこととなった。
また、空いた時間には災害ボランティア活動を行うこととした。地R元としては、9月7〜9日(小池)、9月10〜11日(千葉・村野・木嵜)、9月24〜25日(細野)に続く4回目のボランティアである。


7日21:00、千葉はデリカD:5で東京都府中市内の自宅を出発。まずは細野宅へ向かい、細野と合流する。

22:00、JR新宿駅・西口の新宿スバルビル周辺にて小池・鈴木・野池と合流。

22:30、東北自動車道・浦和IC付近の「ローソン さいたま大門店」にて山口と合流。車高がやや下がりながら、東北自動車道の北上を開始する。


8日5:30、盛岡ICを通過。山口の案内で、まずは「大衆食堂 半田屋 盛岡上堂店」にて朝食。セルフ式食堂でつい取りすぎてしまう。

岩泉町門(小川地区)
被害を受けた岩泉町門地区(小川地区)

6:00、国道455号線で岩泉町を目指す。
前回ボランティアで訪れた時には道路が流失していたため、大きく迂回して久慈市山形町経由で現地入りしたが、今回は復旧したとのことなので嬉しい。

7:00、岩泉町門地区(旧:小川村地区)に立ち寄る。ここも小本川の氾濫により被害が大きかったところである。多数の家屋は崩壊、保育園「岩泉町立こがわこども園」も園庭の一部が流失していた。想像を超える被害に言葉が出てこない。
二升石地区へと進むと、通行止めとなっていた箇所へと着いた。ここも小本川の氾濫により、国道が大きく決壊したようである。応急処置された迂回路を進む。

7:30、尼額地区に到着。災害ボランティアにて床下泥かきを行った上川原さん宅を訪問。床は復旧、綺麗になっていた。旦那さんがクッションフロアを張ったらしい。奥さんとハグしてから別れる。

8:00、岩泉地区に到着。災害ボランティアのときに宿を提供して頂いた坂本町議会議員宅を訪問。今回のスケジュールを伝える。阿部首相、眞子さま、蓮舫代表がそれぞれ災害視察・慰問に来ることを知らされる。
続いて、同地区の小向さん宅を訪問。車庫内の家捜しをする。

8:30、日本洞穴学研究所のある龍泉洞職員用駐車場に到着。すでに松本は到着していた。家崎・菊地さんもそれぞれ合流。

8:45、 「龍泉洞観光センター」2Fへ移動、日本洞穴学研究所を中心とした緊急調査を行うメンバーが集合する。
伊藤田所長によるブリーフィング。ケイバーは、ロープを用いて龍泉洞洞口上壁面の被害状況を調査する予定であったが、朝から小雨が降り、日中はしっかりとした雨の予報。千葉が調査日を翌日に変更することを提言、了承を得る。
簡単な昼食の配給を受ける。

9:15、ケイバーは三上所長に挨拶をしてから龍泉洞職員用駐車場へと戻り、千葉・細野・小池・松本・野池・山口・鈴木は災害ボランティア活動に向けて出発。

9:30、尼額地区の元公民館館長:山崎さん宅を訪問。かなり被害が大きかったお宅である。お手伝いすることがあるか尋ねると、一息ついたので大丈夫とのこと。
岩泉地区へと戻り、ボランティア指定駐車場で着替える。つなぎ+長靴なので、ケイビング姿となんら変わりはない。

10:30、岩泉町社会福祉協議会に設置された「岩泉町災害ボランティアセンター」にて、鈴木をリーダーとして登録を行う。今回は乙茂地区のお宅での庭の泥かきである。職員の運転するワゴン車に乗って移動。

11:00、ボランティア開始。ここのお宅は小本川から200mほど離れているが、道路の斜向かいには岩泉ヨーグルトを作っていた「岩泉乳業」、9名が犠牲になった高齢者グループホーム「楽ん楽ん」があり、被害が大きかった地域の一つである。
ボランティア先の庭には泥が堆積しており、すくい取るようにして排除していく。たまにゴミも埋まっていて手ごわい。

13:00、昼食後に作業を再開していると、「楽ん楽ん」の方になにやら動きがある。あれはSPか? 通りから聞こえる世間話によると、どうやら阿部首相が来るらしい。
雨が強くなってきたので、作業を中断して、千葉はスコップを持ったまま近づいてみる。20名ほど「岩泉乳業」玄関に集まっている。
道路の反対から様子をうかがっていると、SPに「警察ですが、良かったらあちらにどうぞ」と声をかけられる。警備上、あちこちにいると都合が悪いのかもしれない。
お言葉に甘えて、しらっと列の端にに並ぶ。すると別のSPに「スコップはちょっと・・・・」と声をかけられる。確かに片手にスコップでは襲う気満々にしか見えない。隅っこに置く。
細野、続いて松本も合流。

13:20、阿部首相登場。「やれることは全てやります」とのこと。

13:30、作業再開。

14:00、更に雨が強くなってきたので中止指示が下る。迎えのワゴン車で「岩泉町災害ボランティアセンター」に戻ると、松茸おにぎりを支給される。嬉しい心づかいである。

14:30、龍泉洞職員用駐車場へと戻り、「龍泉洞」へ入洞することにする。
洞床は清掃されており、すでに綺麗になっていたが、洞口付近の足元灯や床板の一部は水圧によって破損していた。
地底湖周辺は配電盤が水没した形跡があり、救助用ボートはズタズタになっていた。階段を登り、水位が上がった地点の説明を松本より受ける。
しばらくダイバーによるROV(遠隔操作型無人潜水機)を用いた調査を見学。

16:00、出洞。

16:30、「龍泉洞温泉ホテル」にて入泉。ボランティアは無料で入れて頂けた。 ここは避難所となっていて、ロビーや大広間などに被災された方々が多数いた。

17:30、「上あめや」「かぎや」「スーパーたけや」「薬王堂 岩手岩泉店」などで買い出し。

18:30、龍泉洞職員用駐車場にて夕食開始。小向さんの差し入れや、松本の秋刀魚を頬張る。途中で龍泉洞カルスト・プレイン・プロジェクトの面々も合流。

22:00、 「龍泉洞観光センター」2Fで就寝。
岩泉町災害ボランティアセンター 岩泉町乙茂地区 岩泉産業株式会社
ボラセンにして受付 泥をかき集める細野 阿部首相の訪問


9日6:00、順次起床。そそくさと対岸の龍泉洞職員用駐車場へと戻って朝食。岩手県気仙郡住田町にて活動していた東京スペレオクラブ(落合・相場・福間・田島)が合流。

8:00、「龍泉洞観光センター」2Fへ移動、伊藤田所長によるブリーフィング。簡単な昼食の配給を受ける。壁面調査にはもってこいの天気である。

8:30、再び龍泉洞職員用駐車場へと戻って準備。対岸を見ながら作戦会議。
野池・鈴木・落合・相場・福間・田島は災害ボランティアへの準備を行う。

9:30、洞口前で記念撮影を行ってから調査開始。体制は、千葉・細野・小池・松本・山口・小向が壁面、家崎・菊地は洞口前にてサポート。
調査エリアは龍泉洞が開口する壁面、現洞口の北西に位置する1本目の涸れ沢から旧洞口の東壁面までの約90m、現洞口からの比高約+30mとした。これは約3,000uの範囲である。
急勾配斜面やほぼ垂直な石灰岩露頭であるため、安全確保としてSRTを用い、6ヶ所を下降しながら主に転石や浮石の目視による確認を行った。
調査の結果、 台風10号による豪雨の影響だと考えられる危険個所は確認できなかったが、今後、洞口付近へ落下する可能性がある石灰岩転石や浮石は8ヶ所で確認された。そのなかでも、旧洞口へと延びる長さ約50mの急斜面(涸れ沢)中腹の転石だまりは不安定な状態であることから早急に落石防護網などの対策が必要であろう。

14:00、調査終了。

14:30、意外と早く終わってしまったので、急遽、久慈市山形町の「内間木洞」の被害状況を確認しに行くことになる。着替えもせずに車両移動開始。

15:30、「内間木洞」到着。洞口前は地面が大きくえぐられていた。鉄製扉の下も人が通過できるぐらいえぐれている。どうやら新川洞が大増水、千畳敷を通らずに新ルートで洞口へ流出したらしい。この新ルートは瓦礫が詰まっていたので、ここが貫通するなんて思ってもみなかった。

16:00、「内間木洞」離脱。

17:00、岩泉町へと戻り、「龍泉洞温泉ホテル」にて入泉。

19:30、旧岩泉駅前にある「ぐうぐう亭」にて夕食。災害ボランティアに来た東京スペレオクラブと共に、これも復興支援の一助と焼肉を多楽食べる。

22:00、 龍泉洞職員用駐車場へと戻り、ちょこっと飲んでから、「龍泉洞観光センター」2Fで順次消灯。
龍泉洞・洞口 龍泉洞・洞口上部の外壁面 龍泉洞・洞口上部の外壁面
外壁調査活動メンバー リギングをする山口 危険性のある転石を確認
内間木洞・洞口前 内間木洞・洞口の鉄扉 内間木洞・千畳敷付近
洞口前が増水でえぐられていた 鉄扉の下部もえぐられる 増水により詰まっていた箇所が開通


10日8:00、東京組は「龍泉洞」出発。

10:30、東北自動車道・盛岡ICを通過。

12:30、「長者原SA」到着。フードコート「長者亭」にて、いつも食べる「たん塩丼」と散々迷った挙句、「牛たんあいもり丼(牛たん焼き+牛たん煮込み)」を選択。やや失敗の感あり。

18:30、東北自動車道・浦和ICを通過。順次解散となる。
しかし、千葉には最大ミッションが残っていた。息子への土産である。岩泉町内やSAで探していたのだが、これといったものが見つからず帰京してしまった。悩んだ挙句、「仮面ライダーエグゼイド」のガシャットを購入することにする。

20:45、「テックランド東京本店」到着。なんとか閉店前に間に合って購入。

21:00、細野宅で解散。


あらためて豪雨被害の大きさを認識した活動であった。(文責 千葉伸幸)

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