タイトル 地底旅団ROVER元老院第275回CAVING
サブタイトル 第21次龍泉洞再測量調査 at 岩泉町・龍泉洞
分 類 合同・調査ケイビング・報告会
入洞洞穴 龍泉洞(湧口、湧窟、龍泉窟)、高内沢の熊の穴([仮]熊の寝床穴)
日 程 2012年11月23日(金)〜25日(日)
参加者 細野、菊地敏雄(日本洞穴学研究所)、山口真也(東山ケイビングクラブ) 以上3名
日本三大鍾乳洞のひとつとされる国指定天然記念物「龍泉洞」。本洞穴は透明度日本一という地底湖が見所である、岩手県岩泉町経営の観光鍾乳洞である。
今回は年末年始に行われる第22次調査の下見と思案、地元情報による新洞確認と探査、岩泉町民向け「龍泉洞潜水調査報告会」を中心に計画された。


22日23:00、細野が東京を単独出発。約10ヶ月ぶりとなるが、ドライブ気分で東北自動車道を北上。
23日6:30、日本洞穴学研究所前に到着。車中にて仮眠。

9:30、起床。従業員の周辺掃除が行われているなか、洗面を済ませる。

Artist☆Collection ご当地クリアファイル 10 龍泉洞
ご当地クリアファイル 10 龍泉洞
10:00、龍泉洞事務所にて菊地さんと合流。新任された小向所長と初対面。準備しておいた手土産を渡して挨拶をする。見回すと初顔の受付嬢や従業員さんばかりだった。
今回の活動の件、年末年始に行う調査内容の件、25日に行われる岩泉町民向け「龍泉洞潜水調査報告会」の準備について等々打ち合わせる。
菊地さんと所長が打ち合わせをしている最中、土産物屋に行って物色。新商品「龍ちゃんクリスタル」、東北萌系コラボ商品「Artist☆Collection ご当地クリアファイル」を購入。萌系には興味はないが、龍泉洞がモチーフのようなので購入。

11:30、昼食のために焼肉屋「ママハウス」へ。5年ぶりの来店であったが、以前と変わらない雰囲気。石焼ビビンバ・ランチセットを注文。

12:30、龍泉洞に戻り、菊地さんと観光通路を確認。測量データは残っているが、スケッチが残っていない箇所の確認。以前より気になっている観光通路上部支洞の確認。途中で気付いた箇所もあり、登攀が必要な場所が幾つもあった。
所々で観光客への説明や、コウモリの様子や種類をレクチャーしたりした。

14:30、龍泉洞事務所に戻ったところに山口が到着。2階控室で各PCを開き、今までの調査写真を確認した。
その後、山口・細野は龍泉洞に入り、登攀箇所やアタック箇所の確認を行った。

18:00、民宿「新田」へ移動。風呂に入り夕食。夕食は種類も量も多く、ビールを嗜みながら食しているとお腹がパンパンになってしまった。
部屋に戻り、早速年末年始活動へ向けての話をする。

23:30、順次消灯。
24日7:30、起床。朝食、準備を済ませて出発。

9:00、江川地区ドリーネ付近の車両退避場に到着。竪穴装備を準備しているところへ、地元案内人の方が到着。挨拶と準備を終え、山向こう(ドリーネの反対側)に位置する林道へ移動。

9:30、着替えてから入山開始。移動中に熊の足跡を確認。最近歩いた跡であり、付近にいることは間違いなく、糞から子連れであろうとのことであった。
 案内の方も数年前に確認したきりで、季節も違ったため、簡単には洞口が見つけられずに山狩り状態に突入。各々横に広がり尾根へ向かって移動しながら詮索。急斜面であり、息を切らしながらの山狩り。細野にとっては久々の山狩り、しかも洞穴があることは分かっているので、楽しみながら黙々と探していた。

12:00、全員一旦尾根へ集合。昼食。GPSで位置確認を行う。

12:30、気分を切り替え再度上から見下ろし、山狩り再開。ゆっくり下っていくと、案内人の方の発見のコール。枯沢を一つ間違えていたようだ。
洞口は岩帯の基部に開口しておらず、付近にも目立った石灰岩露頭もない。山の中腹にポッカリ空いている。

12:50、山口・細野が熊を警戒しつつ入洞開始。
洞口(幅0.8m 高さ0.4m)より南東方向へ延びる横穴である。洞口より通路幅が広くなりながら約5m進むと、高さ1.6mの小さなホールとなる。右手には近年熊が寝床にしていると思われる枯草が敷き詰められた凹み箇所あり。進行方向は左右のルートに分かれ、高さ0.7mの通路が約2.5m続き、高さ2.7mのホールに到達する。左側の洞壁はフローストーンで覆われており、洞床は泥。約−20度の傾斜が8m続き、高さ1.3mと徐々に低くなる。数か所に石筍が現れるが、他に目立った二次生成物は確認できない。左側足元に流出口と思われる狭洞があるが通過することはできない。
進行方向へは約+20度の傾斜となり、左右のルートとなる。両ルートの高さ0.6mで幅0.8m。6m進むとルートが再び繋がり、幅5.6m、高さ1.6mのホールとなる。洞床が大小の崩落石となっており、左側の洞壁はフローストーン。左側には高さ約1.3mの位置に流入口らしき箇所が確認できたが、幅0.2m、高さ0.2mとなっており、進むことはできない。
進行方向は5m、約−40度の傾斜となって最奥部へ。天井高は4.6m。
総延長は約35m。熊の寝床になっていたのであろう窪みが洞内に4ヶ所確認できた。最奥ホールにはキクガシラコウモリを17頭、ウサギコウモリを1頭確認。熊の糞があり、トビムシが数十匹集っていた。
一旦出洞して簡易測量準備。山口・細野は簡易測量、菊地さんは記録写真を撮影するために再度入洞。前人未到の洞窟に入るのはテンションが上がり、楽しいものである。

15:30、全員出洞。下山を開始するが足取りも軽い。

16:00、林道に到着。着替えを済まし案内人の方と解散。

16:30、龍泉洞事務所に立ち寄りって小向所長に報告。借りていたGPSを返却。

17:30、民宿「新田」へ移動。風呂に入り夕食。今晩の夕食も種類が多く楽しい、やはりビールを嗜みながら食す。

24:30、順次消灯。
(仮)熊の寝床穴・洞口 (仮)熊の寝床穴・洞口 (仮)熊の寝床穴
(仮)熊の寝床穴の洞口 入洞開始 熊の寝床その1
(仮)熊の寝床穴 (仮)熊の寝床穴 (仮)熊の寝床穴・最奥ホール
折れた石柱 熊の寝床その2 最奥の傾斜部
(仮)熊の寝床穴・最奥ホール (仮)熊の寝床穴・最奥ホール (仮)熊の寝床穴・最奥ホール
熊のグアノに集まるトビムシ 寄り添うキクガシラコウモリ ウサギコウモリ

25日7:00、起床。朝食、準備を済ませて出発。

8:00、岩泉町民館へ到着。「龍泉洞潜水調査報告会」の会場準備、菊地さん製作の龍泉洞立体模型の搬入、PC環境の確認を手伝う。柳沢先生、伊藤田先生、潜水調査報告を行うために前日入りしていたダイバーの久保さんと久々に挨拶を交わす。

10:00、「龍泉洞潜水調査報告会」が始まる。町民の方々、マスコミ、他関係者合わせて約40名の参加があり、20分程度の報告会用VTRが流された後、菊地さんが「潜水調査実施まで」と題打ち、潜水までの経緯を説明。
久保さんが「巨大地底湖を目指して」と題打ち、実際の潜水状況と説明を行う。
その後、菊地さんが「第一地底湖〜X洞までの水中と陸上模型」を使用し、水陸位置関係と龍泉洞調査のこれからについての説明が行われた。
町民、関係者からの質疑応答。

12:00、報告会が終了して会場の片づけ。報告会後のマスコミ関係者からの個人攻撃を菊地さんが受けていた。

13:00、柳沢先生・伊藤田先生・久保さんと一緒に道の駅「いわいずみ」にて昼食。細野は岩泉産短角牛を使ったハンバーグ定食(1050円)を注文。

14:00、菊地さん・山口・細野は龍泉洞事務所へ移動。小向所長と今後の活動連絡、潜水調査のお願い事項を確認する。

15:30、全員解散。龍泉洞事務所を出発。

17:30、盛岡南ICより東北自動車道で帰京の途へ。連休の最終日であったが、時間的に渋滞にも合わずに済んだ。

23:50、細野宅に到着。


年末年始に行う活動の思案と今後の予定を話し合うことが出来た。
地元の方の情報をもとに、龍泉洞より北方向にある新洞では熊の寝床となっている個所が複数発見され、前人未到の洞窟を探査でき有意義な時間であった。情報からするとその付近にはまだ、多くの洞窟が点在しているようだ。山の状況からして急斜面を登る場面が多い地域ではあるが、一帯の山狩りを行えば新洞が発見できる確率が高く、龍泉洞に流れ込んでいる水脈を確認できる洞窟が確認できる可能性も高い。
陸上部隊はまだまだ詰める個所があり、新地底湖への希望もあるが、現在までの龍泉洞全貌確認も行わなければならない。(文責 細野誠)


※「(仮)熊の寝床穴」は、日本洞穴学研究所報告 第31号(2013)にて「高内沢の熊の穴」として発表。総延長35m。

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