以下の伝承がある。
昔、この地に住むおたつという娘が二ツ森山に山菜採りへの帰り道に、若い男が現れて、「黄金をあげるから、家に来て布を織ってほしい」と頼まれた。娘はその男の家に連れられて行く。多くの召使をかかえる立派な家で、男の両親も歓迎してくれた。娘は「両親に許しを得て来るから」と、一旦家に戻ったのだったが、それから毎日、男は黄金を持って訪ねてくるようになった。そして男は「この黄金は、おまえが私の女房になるまで岩穴にしまっておく。女房になったら、その隠し場所を教えよう」と言うのだった。その内、娘は妊娠した。娘の両親は、やって来た男の着物にこっそりと針を縫い込み、糸を通して糸車を引かせた。糸を手操って行って黄金を見つけ出し、男は殺してしまう計画だった。おたつが、この糸を手繰りながら男をつけて行くと、男は岩穴に入らずに二ツ森の山の中に入って行った。岩穴までやって来た娘は、急に産気づいて子を産み落としたが、それは幾百幾千とも知れない小さな卵だった。それは上部がウロコ、カブが蛇の腹に似ていた。驚いた娘は、家にも帰れず恨めしげに二ツ森を眺めながら死んでいった。それからというもの、細尾の沢からは蛇のウロコに似た模様のある石が出るようになり、いつしかこれは「蛇体石」と呼ばれるようになった。
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